日本には25の世界遺産があり、また、重要文化財も13,000以上。登録指定文化財や史跡なども合わせると、その数は膨大です。経年劣化等の問題もあり、保存・管理が不可欠ですが、その方法については体系化されていないのが現状です。そこで立ち上がったのが筑波大学の保存化学研究室。日本中の世界遺産や重要文化財を3Dスキャニング&モデリングして、保存・管理の方法を体系化しよう!歴史的価値を未来へ繋げよう!という志を持って動き始めています。この志に賛同する多くの民間企業も加わり、今、全国各地で3Dスキャニングを実施するフィールドワークが進行中です。
マルヨシがフィールドワーカーの一員として参画したのが「奄美大島の戦争遺構〜保存プロジェクト」。奄美大島の瀬戸内町西古見地区には、砲台、観測所、弾薬庫、兵舎などの要塞跡の戦争遺構が当時のまま残されており、現在は観光資源にもなっています。
奄美大島要塞は1921(大正10)年に砲台建設がスタート。その後、世界情勢に即した国防施策により、断続的に建設が行われ、大島海峡防備のため築かれた要塞は、アジア・太平洋戦争終結まで使用されました。
奄美大島要塞跡は、大島海峡付近に集中的に残存していることから、要塞全貌の理解が可能であり、ワシントン海軍軍縮会議や太平洋戦争の開始など、日本の近代史を理解する上で重要な遺跡であるとの評価を受け、それが国の史跡指定の答申につながっています。
今回のプロジェクトでは点在する戦争遺構および、それらを結ぶ道路も含めて全て3Dスキャニング。要塞の全貌を仮想空間に再現することによって、近代史研究をはじめ保存化学を通じての保護・管理への活用など、様々な検証やシミュレーションを可能にするという目的に向かって進んでいます。
西古見地区点群データ(弾薬庫全体像)
点群データ(弾薬庫内部)
手安地区点群データ(弾薬庫全体像)
マルヨシにとっても3Dスキャニングのトレーニングになることはもちろん、「歴史的価値を未来につなぐ」という志や使命を体現する貴重な機会となりました。世界遺産や文化財、史跡の保存化学プロジェクトはこれからも続きます。私たちとしては、引き続き、できる範囲での協力は惜しまないとのスタンスで、今後もフィールドワーカーの一員としての活動を継続していきます。
また、メッシュ化、BIM化、VR/AR/XRなど、データ処理やモデリングについても、文化財・保護・管理の領域で、付加価値のある独自サービスを提供できるようトライアルを続けていきます。